はじめに
『ELDEN RING』の序盤、リムグレイブでちょっと近寄りがたい雰囲気で立っている侍、血の指の狩人ユラ。話しかけると「引き返すことだな」なんて言ってくるけど、いざ血の指に侵入されると赤いサインから駆けつけて、一緒に戦ってくれる頼れるおじ。プレイヤーと同じく褪せ人である。
そのユラが、終盤の巨人たちの山嶺・ザミェルの廃墟で、まったく別人の口調で話しかけてくる。中身はシャブリリという別の存在に入れ替わっていて、こちらに狂い火の王になる道をすすめてくる。

まりたん
一体、誰やねん!
と思わずつっこみたくなりつつ・・・。
今回は、狩人「ユラ」がなぜ血の指を追っていたのか?そしてなぜ彼の体が乗っ取られることになったのかを、ゲーム内のテキストを見ながら考えてみます。
目次
血の指の狩人ユラとは何者か?
ユラは葦(あし)の地から来た侍で、その名の通り狭間の地で血の指を狩って回っているNPC。プレイヤーが血の指に侵入されると、狩人として自動で召喚されて共闘してくれる。


まりたん
白面のヴァレーも血の指だったよね。ということはヴァレーとユラは敵対勢力かな
イベントを進めると、リムグレイブでネリウス討伐、リエーニエでカラス山の凶手討伐、そしてアルター高原の第二マリカ教会で純紫の血指エレオノーラ、という順で話が進んでいく。

そして最後、その第二マリカ教会で、ユラはエレオノーラにやられて倒れている。こちらに愛刀「長牙」を託して、そのまま息を引き取る。
なぜユラは血の指を狩っていたのか
そもそもだが、ユラが血の指を狩る理由はゲーム中でちゃんと説明されない。数少ない手がかりが、ネリウスに斬りかかるときのこの台詞だ。
”見つけたぞ、血の指、ネリウス、切り捨てる。その凶血と共に”
気になるのは後半の「その凶血と共に」のほう。斬る相手はネリウスなんだけど、彼が本当に敵だと思っているのは血そのもので、ネリウスはその入れ物にすぎない、という言い方になっている。

まりたん
つまり入れ物を倒しても、狩りが終わらないってこと?
ということは、おそらく、この狩りは一生終わらない。血の指が一人でも残っていれば、あるいは血の君主モーグが在る限り、ユラは狩り続けるしかない。
もうひとつ意味深なのが、ユライベントの最終的な報酬に「浄血の結晶雫」があること。

まりたん
モーグの呪い(あの血が数え上げられていくやつ)を浄化してくれる雫か!
血を浄める道具が、血を憎んだ男の死体のそばから出てくる。ユラの人生をそのままアイテムにしたようだ。
ただ、動機の核心はやっぱりわからない。分かっているのは、彼がエレオノーラを追っていたこと、最期に彼女のことを語って死ぬこと、そして彼を殺したのがそのエレオノーラだったこと。二人とも葦の地の武器を使っている以上、無関係ではないんだろうけど・・・。
長すぎる刀「長牙」が教えてくれること
ユラの愛刀「長牙」の説明文はこうなっている。

”恐ろしく長い刃を持つ刀 血の指の狩人、ユラの獲物”
この後に、その姿は鍛えられた槍のようで、突き貫く攻撃で真価を発揮する、という説明が続く。刀としては明らかに異形で、とにかく刀身が長い。

これ、見た目の趣味じゃなくて実用のための形なのかも?と思った。
血の指はだいたい出血の使い手だ。ネリウスのレドゥビアも、エレオノーラの双薙刀も、近づいて斬って、相手を出血させて倒す武器。つまり彼らの戦いは「近い距離」でしか成立しない。
長牙は、その距離に立たないための武器だ。相手の間合いの外から先に届いて、こちらは血を浴びない。決闘用の刀ではなく、駆除用の道具のような・・・。

まりたん
血の指絶対狩るマンだったのね
なぜシャブリリはユラの体を選んだのか

で、エレオノーラにやられて死んでしまったユラ。のはずが、山嶺・ザミェルの廃墟前で佇んでいた。
でも、喋り方も雰囲気も元のユラではなくなっている。どうやら、シャブリリというやつに体を乗っ取られてしまったようだ。
シャブリリは体を持たないので、誰かの体を借りるしかない。そこで選ばれたのが、死んだばかりのユラだった。理由はたぶん、下記の内容
- ① 褪せ人の体だから。 狂い火の王になれるのも、狭間の地を自由に歩き回れるのも褪せ人だけ。案内役として動くなら、動ける体がいる。
- ② 目的を果たせずに死んだから。 ユラの狩りは終わっていない。終わらない目的を抱えたまま死んだ男の、行き場のない執念だけが残っている。宿るには都合がよかったはず。
- ③ プレイヤーが信用している顔だから。 なんとなく。個人的にはこれが一番しっくりきた。
リムグレイブで出会って、ネリウスを一緒に倒して、レアルカリアでは彼のサインに応じて助けに行って、最後に刀まで託された相手。その顔で、雪の中から親しげに「地の底へ向かえ」と言ってくる。讒言者にとって、これ以上の仮面はない。
ちなみに山嶺・ザミェルの廃墟前のユラ(シャブリリ)は、腕で顔を覆うような変な姿勢で立っている。彼にまつわる「シャブリリのブドウ」の正体が人の瞳(ハイータのイベントで「それは人の瞳だ」と答える場面がある)なのを思うと、目を隠しているのか、見せたくないのか・・・と思ったりもする。
血の指を狩り続けた男が、最後には乗っ取られてしまった。

まりたん
狩人が器になってしまうという逆転、悲しいかな・・・
ユラの死とシャブリリの目的に、因果はあるのか
「シャブリリがユラを殺させたのでは?」と考えたくなるけど、これはたぶん違う。
ユラを殺したのはエレオノーラで、彼女は血の指、つまりモーグ側の存在。狂い火とモーグは目的も出自もまったく別系統で、手を組む理由がない。
シャブリリのほうは、破砕戦争のあとからずっと、見込みのありそうな褪せ人を三本指のもとへ送り込み続けてきた存在だ。指痕爛れのヴァイクがその失敗例で、王の一歩手前で燃え尽きて「王に近付いた者の封牢」に封じられている。つまり何度も失敗していて、そのたびに次を探している。都合のいい死体があったから使った、というほうが自然だと思う。
でも、直接の因果がなくても、別の形の因果はある。
ユラは血を憎んで、血の指を追いかけた。追いかけたからアルター高原まで来て、エレオノーラに辿り着いて、そこで死んだ。つまり彼の憎しみが、彼の体を「誘導役の椅子」まで運んだことになる。
血の指を狩っていなければ、彼はあの場所で死んでいない。死んでいなければ、シャブリリの器にもならなかった。何かを憎み続けた結果が、まったく関係ない誰かの道具になる。ユラの物語は、そういう形をしている。
褪せ人の隣に立つ人、という役目
ユラが死んだのがマリカの教会だった、というのも気になる。

マリカの教会は、褪せ人が導き手と出会う場所の系譜にある、いわば黄金樹側の場所。そこでユラは死んで、雪山では狂い火の使者として立ち上がる。
思えば、褪せ人の隣にはいつも誰かが立っている。メリナは黄金樹を焼くために火を求め、シャブリリはすべてを焼いてひとつに還すために王を求める。どちらも「焼く」と言うのに、意味は正反対だ。
ユラは、その「隣に立つ役」の椅子に、死んでから座らされた。自分では何も選んでいない。狩人としての彼の物語は第二マリカ教会で終わっていて、あの雪山に立っているのは、もうユラじゃない。
そして、いざ狂い火を受領して戻ると、シャブリリの姿は消えていて、鉄の編み笠と浪人の鎧一式だけが落ちている。器が用済みになった、と考えるのが妥当。刀はもう受け取っている。彼が持っていたものは全部こちらに移って、彼自身は何も残らない・・・。
おわりに
ユラって、最初は「血の指戦で協力してくれる親切なおじ」くらいの印象だったけど、たどっていくと終わらない狩りに人生を使い切って、そのうえ死体まで利用された人だったのかなって。めっちゃ不憫。
誰よりも長い刃を持っていたのは、血に触れずに斬るためだった。その距離の取り方は正しかったはずなのに、彼は最後、いちばん近い場所から乗っ取られてしまう。この皮肉が、とても悲しい。
ユラとエレオノーラが本当はどういう関係だったのか、シャブリリがもともと何者なのか、そのへんは結局はっきりしないままだけど。でもフロムのこういう余白は、たぶん埋めないほうが面白いのかも。
ではまた~



